授業詳細

CLASS


猟師と鹿と里山と
~郡上八幡で鹿の解体からBBQまで~

開催日時:2014年09月27日(土) 13時30分 ~ 18時00分

教室:NPO法人メタセコイアの森の仲間たち(集合場所)

レポートUP

先生: 興膳 健太 / 猪鹿庁 代表 自然体験インストラクター・猟師

カテゴリ:【食/くらし/郡上】

定 員 :20人

●参加費5000円を頂戴します。(鹿解体体験+BBQ代含む)
●アクセス 
①直接車 岐阜県郡上市大和町剣82-1 
※メタセコイアの森の仲間たち事務所集合
②公共交通機関 岐阜駅からバス
※名鉄岐阜C乗り場11:52発 郡上大和13:26着 ピックアップします。
※②で来られる方はdai-nagoya@univnet.jpまでご連絡下さい。
【とる・さばく・たべる】
「とる」獣害から里山を守り、猪・鹿にとっても住みやすい環境をつくる。
「さばく」丁寧に解体することで臭みのない「天然の食肉」としての価値をつくる。
「たべる」命を奪うだけでなく、美味しく食べられる機会をつくる。

3つの活動を一貫することで岐阜県郡上市の里山保全をされている
猪鹿庁(いのしかちょう)さん。
先生は自ら猟師もされている興膳(こうぜん)さんと仲間のみなさんです。

猪鹿庁のメンバーのほとんどは郡上の自然に惚れ込んで移住してきた20-30代の若者達。
地元のベテラン猟師さんや農家の人たちを巻き込み、よそ者だからこそできる
里山保全や獣害対策、猟師の働ける環境作りなどのチャレンジを行っています。

今回は自然が多く緑豊かな郡上八幡で
【とる・さばく・たべる】の3つのキーワードをもとに授業を行います!

【とる】
猟師とはどんな仕事をしているのかを聞いたり、
狩りをする罠、手作りの弓矢などを見せてもらいます。

【さばく】
鹿を1頭まるごとさばきます。
皮をはぎ、食べるために部位ごとに解体していきます。
もちろん先生にリードしてもらいながらですが、生徒さん達ですべて挑戦しますよ。

【たべる】
みんなで解体した鹿をそのままBBQで頂きます!
鹿肉だけでなく、郡上の野菜や猪肉など地元の美味しい食材も食べられます。
「食べる」という普段何気なくしていることも五感で感じられそうですね。

一見、街で生活している自分たちとはかけ離れた生活のように見えます。
しかし離れているからこそ見えてくることがたくさんありそうです。
「働くこと」「関連性のこと」「食べること」など、
皆さんなりの気づきがあると嬉しいです。


【当日の流れ】
13:15 受付開始
13:30 「とる」猟師のあれこれを学ぶ
14:30 「さばく」鹿一頭をみんなでさばく
16:00 「たべる」みんなでさばいた鹿肉をBBQ
17:45 集合写真・感想
18:00 解散


※この授業は(株)ブラザー工業の協賛授業として開催しています。


(授業コーディネーター 加藤幹泰)
秋晴れの穏やかな日差しを浴びて、キラキラと水面を輝かせる長良川。
歴史ある城下町には古い建物と新しい建物が混在し、独自の賑わいをみせている。
そして、まちのどこを見渡しても目に飛び込んでくるのは、緑に覆われた美しい山々。

名古屋を飛び出し、車を走らせること約一時間半。
今回の大ナゴヤ大学の教室となったのは、豊かな自然と情緒あふれる町並みが美しい岐阜県郡上市。
そして、そんな自然豊かな郡上の里山で授業を開催してくれたのは、里山保全活動を行う『猪鹿庁』の皆さんです。


■好奇心は県境を越える!

まずは恒例の生徒さんたちによる自己紹介からスタート。
「里山のことが知りたい」、「『猪鹿庁』の取り組みが面白そうだった」、「お肉が人の口に入るまでの過程が知りたくて」など、きっかけは人それぞれ。
中には「美味しいお肉が食べたくて」という率直な意見も。
きっかけは千差万別でしたが、どの生徒さんにも共通して、今回の授業に対する熱い意気込みが感じられました。

この日は岐阜県や愛知県、滋賀県などの周辺市町村から集まってくださった生徒さんが多数でしたが、中には、はるばる東京都から車で6時間もかけて駆けつけてくださった方も!
もちろん通学距離でやる気をはかる訳ではありませんが、このことからも『猪鹿庁』の授業に対する生徒さんの期待の大きさが伺えました。


■『猪鹿庁』ってなぁに?

生徒さんの自己紹介が終わったところで、『猪鹿庁』の長官である興膳(こうぜん)健太先生によるスライドレクチャーのはじまりです。
そもそも、『猪鹿庁』とはどういう組織なのでしょう?

『猪鹿庁』とは、郡上の里山保全活動や、それに関わる人材育成を行う組織で、現在は、捜査一課・衛生管理課・ジビエ課・山育課・研究課・広報課の6つの課から構成されています。
今回の授業では「とる、さばく、たべる」をテーマに、捜査一課・衛生管理課・ジビエ課の内容を体験させていただきます。


■里山を守るってどういうこと??

郡上をはじめとする中山間地域では人口減少の一方で野生動物の増加がすすみ、田畑や森林被害、交通事故などの獣害が顕著になっているそうです。
人間が穀物や野菜を育てたり、植林をしたとしても、それらが動物によって食べられてしまうという農家さんたちの悲鳴が後を絶ちません。

「だからこそ、人間が里山に入って狩猟をしたり、動物が人間の住む里に降りてこないように警告してあげる必要があるんです」と興膳さん。
なるほど、猟師はただ動物を狩るだけにあらず、人間と動物の適切な関係をつくるコーディネーターとして、みんなの里山を守っているんですね。

また、獲った動物を食品加工したり流通販売すること、つまり六次産業化することで組織を運営していくための資金をつくっていくことも、里山を守ることに繋がる『猪鹿庁』の大切なお仕事なのです。


■猟師=刑事?!

興膳さんによるレクチャーを受けた一行は、いよいよ一限目の教室である里山へ。

里山に到着すると、生徒さんに配られたのはビンゴのような一枚のシート。
でもコレ、ただのビンゴではなく、マス目の中には動物の足跡や角、糞などの写真が配置されています。

「猟師は動物の足跡から、どんな動物か、どちらの方向に向かったか、いつ頃のものなのか、という情報を読み取ることができるんです」と興膳さん。
生徒さんにも猟師になったつもりで動物の痕跡を探してもらうために、『猪鹿庁』オリジナルの「アニマルサインビンゴ」を用意していただきました。

いざ里山に入ってみると、動物が草をかじった痕跡や足跡、白骨化した動物の背骨などがみつかりました。
現場にしゃがみ込み、動物の痕跡をみつめながら、あれこれと推測を始める『猪鹿庁』捜査一課のエース・瀬戸さん。
その姿はまさに刑事そのもの!

結局、アニマルサインビンゴを完成させることはできませんでしたが、動物の痕跡に注目することで、普段とは違った視点で里山を歩くことができました。
他の生徒さんも猟師になりきることで、新たな発見や気付きができたのではないでしょうか。


■「かわいそう」を「おいしそう」に

里山を下り、次の教室である解体施設に向かうと、『猪鹿庁』衛生管理課の籾山さんが出迎えてくれました。
籾山さんは年間100頭もの動物をさばいているそうで、一頭あたり約10分から15分ほどで解体してしまうほどの腕の持ち主。
そんな籾山さんの指導のもと、いくつかの工程にそって鹿の解体を体験させていただきました。

つい前日まで生きていた動物を解体していくのですから、生々しさはぬぐえません。
生徒さんの中には目を背ける方や、解体作業には手をつけない方もみえました。
スーパーに陳列されているパックに入った「お肉」しか知らない私たちにとって、知ったつもりではいたけれど体験したことのない光景。

でも、「かわいそう」と思っているのは生徒さんだけでなく、実は籾山さんもなのです。
「罠にかかった動物が解体施設に運ばれてくると、お前、なんでかかっちゃったんだよ…という気持ちになるんです」と籾山さん。

しかし、解体施設に運ばれてきた動物は、ゆくゆくは息途絶える運命にあります。
だからこそ、皮も骨も身も、できる限り無駄にすることなく有効活用することが動物に対する礼儀なのだと。

感謝の気持ちをもって素早く、そして丁寧に包丁を入れていく籾山さん。
籾山さんが包丁を入れていくと、「動物」がみるみる「お肉」になっていきます。
その光景は、みている側の感情を「かわいそう」から「おいしそう」に変えていくのだから不思議なものです。


■いただいた生命を美味しくいただく

目でみて、鼻で嗅いで、耳で聴いて、手で触れて。
最後に残るのは、舌で味わうこと。
「動物」を「お肉」に変えた後は、皆さんお待ちかねのBBQ!

『猪鹿庁』ジビエ課の餌取さんと渡辺さんが用意してくれたのは、先ほど解体した鹿のお肉、昨年獲って冷凍保存しておいた猪のお肉、猪肉のフランクやオリジナルのフライッシュケーゼ(鹿と豚を3:7の割合で混ぜた四角いソーセージ)など、どれも普段は口にすることのないお肉ばかり。

お肉も野菜もいい感じに焼けたところで、早速、お肉をパクリッ!
「やわらかーい!」、「臭みが全くないねー!」、「脂がさっぱりしていて、おいしーい!」と、いたるところから生徒さんたちの絶賛の声が聞こえてきました。

いつもより「生命をいただく」ということを意識して食事することになった生徒さんたち。
今回の授業を通して、食材に対する感謝の気持ちが膨らんだのではないでしょうか。


■私たちの食卓の向こう側にあるもの

鉄砲の引き金を引くとき、包丁で身をさばくとき、食材を調理するとき、料理を食べるとき。
人によって、「生命をいただく」ことを実感する瞬間は異なります。
でも、『猪鹿庁』のメンバーをはじめとして中山間地域で生活する人たちは、都市で生活する私たちよりも「生命をいただく」ことや、食材に対する感謝の気持ちを大切にしているのだと感じました。

今回の授業は、生徒さんの多くにとって非日常的な体験だったと思います。
しかし、中山間地域で生活する方々にとっては、これが日常なのです。
そして、私たちの日々の食卓の上に並んでいるお肉も、実はこうした中山間地域に住む人々のおかげで届けられているのです。

そう、都市で生きる私たちと中山間地域で生きる人たちの日常は繋がっている。
都市と中山間地域、都市と農村地域という対立軸で考えるのではなく、ひとつながりの領域として捉えるべきなのかもしれません。
だからこそ、私たちの日々の食卓を支えてくれる、猟師や農家、動物や野菜に対する感謝の気持ちを大切にしたいものです。

今日も美味しい食事に感謝して、いただきますっ!


(レポート担当:ボランティアスタッフ 山田 卓矢
 カメラ担当:ボランティアスタッフ 斎藤 貴子(YUI))


■猪鹿庁のお話が名古屋で聞けます。
猪鹿庁の興膳さんと大ナゴヤ大学学長が、
10月11日(土)に開催されるBrother Earth(ブラザーアース)エコフェスというイベントに出演します。
猪鹿庁の活動のこと、大ナゴヤ大学での授業の話も聞けます。
http://www.brotherearth.com/ja/event/

※写真をクリックすると拡大します。


 

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先生

興膳 健太 / 猪鹿庁 代表 自然体験インストラクター・猟師

「ずっと暮らし続けられる郡上をつくる」を理念に、 子どもや大人達を対象とした山登り・川遊び・雪遊び・ 洞窟探検などの自然体験活動(エコツアー)や 農林業体験、食育、里山対策に取り組む。 猪鹿庁では、アイデアあふれるジビエ加工・販売や 猪骨ラーメンの開発、出前獣肉解体ショー、地元デザイナーとの 連携など、若者らしい発想で郡上地域のむら起こしに奮闘・貢献中。

今回の教室

NPO法人メタセコイアの森の仲間たち(集合場所)

住所:岐阜県郡上市大和町剣 82-1
①直接車 岐阜県郡上市大和町剣82-1 ※メタセコイアの森の仲間たち事務所集合
②公共交通機関 岐阜駅からバス
※名鉄岐阜乗り場11:52発 郡上大和13:26着 ピックアップします。
※②で来られる方はdai-nagoya@univnet.jpまでご連絡下さい。
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