授業詳細

CLASS


やるまいぞ、やるまいぞ! にっぽんの笑い、狂言

開催日時:2014年10月21日(火) 18時45分 ~ 20時45分

教室:名古屋市短歌会館

レポートUP

先生: 十四世 野村又三郎 / 狂言方和泉流野村派当主

カテゴリ:【歴史・文化/NAMO.】

定 員 :20人

※参加費1,000円
※靴下または足袋をご用意ください。
狂言を見たことはありますか?

日本で1番古いお芝居。
日本人が大切にしていた、神さまに捧げる笑い。

愛おしい登場人物。
太郎冠者、主人、大名、山伏、僧、女、神さま。

猿、狐、犬、烏(からす)、蝸牛(かたつむり)、蚊、茸(きのこ)。   
そこでは動物や植物とも心がかよいます。

だれも亡くならず、極悪人も出てこない
あたたかく、優しい笑い―。
じんわりと心に沁みて、時に涙がにじみます。

それは、日本人がどこかに置き忘れた
ふるさとなのかも知れません。


18:15~ 受付開始
18:45~ 授業開始、自己紹介
19:00~ 笑いの源流 ~神話の世界へ~
19:15~ 散楽・猿楽から能・狂言へ
19:40~ 狂言○○(当日のお楽しみ!)
20:00~ 本日、弟子入り
20:35~ アンケート、集合写真
20:45~ 解散


(授業コーディネーター/吉田祐治)
少し肌寒くなってきた秋の夜。
畳の香りが漂う和室に、お仕事帰りと思われる生徒さんがぞくぞくと集まります。

今日の授業は、笑いや狂言の歴史を学び、狂言方和泉流野村派当主の先生に狂言のあれこれを体験させていただく、なんとも贅沢な授業です。

■まずは狂言鑑賞!

授業コーディネーターさんの説明もそこそこに、まずは実際に狂言を鑑賞します。

見せて頂いた狂言『痺(しびり)』は、まぬけな召使いの太郎冠者が主人の言いつけを、足の痺れを理由になんとか免れようとするコミカルなやり取りを描いたはなし。

最初は主人を演じる先生(又三郎さん)のとおる声や仕草に生徒さんの顔にも緊張が見られましたが、話が進むにつれ、息子の信朗さんが演じる太郎冠者の取ってつけた様な言い訳に生徒さんからどっと笑い声が響きます。

■どうしてこの授業に?

鑑賞後には、大ナゴヤ大学恒例の30秒自己紹介。
「(ずっと正座をしていた生徒さんは)もうすでに足のしびれが…!」「観るだけでなく、体験も出来るということで楽しみです。」
「生で観たことはないけれどテレビで狂言観て、興味を持ちました。」「ふつうに観ると値段も高く、足が向かないのですが、今回はとても楽しみです。」

狂言に興味はあるものの、なかなか生で見る機会が少なく、ましてや今回は体験も出来るということで、生徒さんはもちろん、スタッフからも喜々とした声が聞こえます。

■芸能の歴史とイケメン役者の誕生!?

自己紹介の後は、先生から日本の笑いや狂言の歴史について解説してくださいました。

日本の芸能はもともと『古事記』などに書かれる、天岩戸伝説がはじまりとされています。
アマテラスを岩戸から出てこさせるために、アメノウズメはあられもない姿で踊りを披露し、八百万の神を大笑いさせたと言います。
そして時代を経て、雅楽や伎楽、猿楽が登場。能や狂言のもととなる「猿楽」ですが、もとは庶民のものとされ、神社や仏閣で披露されていました。すると、神社仏閣は檀家を増やすために、顔立ちの良い役者を登場させるようになり、これが今の時代まで続く「イケメン役者」のはじまりです。そして、ちょうどその頃に絶世の美少年「世阿弥」が登場し、世阿弥を大変気に入った足利義満により、猿楽は武家という観客を手に入れることとなるのです。

話しが少し変わりますが、「猿楽」に影響を与えた「田楽」という伝統芸能に聞き覚えはありますか。
「田楽」は田んぼの豊穣を祈念するもので歌や踊りなのですが、「田楽」と聞くと豆腐を串に刺して味噌を塗った食べ物を思い浮かべませんでしたか。この食べ物の「田楽」は、実は伝統芸能の「田楽」に由来しているのだそうです。そして、
なんと「おでん」の「でん」も田んぼを意味しているようで、コンビニなどで見かけるおでんを作る専用の容器も田んぼをイメージしているからあの独特なかたちになったのだとか。今まで気にもしていなかった日本語の語源を先生が、面白くわかりやすく教えてくださいます。

学ぶことの多い話しだけに、生徒さんのなかにはメモを取りながら熱心に話しを聞いてらっしゃる方の姿も。

■いよいよ(ちょっと)弟子入り!

さて、休憩のあとはいよいよ(ちょっと)弟子入りのはじまりです。

最初は座ったまま狂言の基礎「うたい」と「舞」を学びます。
「みなさん、まずは素直な気持ちになって、目をつむり、うたを聴いてその歌詞から情景を考えてみてください」
と先生が言うと、生徒さんは目をつむり集中して耳を傾けます。しかし、言葉の節やのばしかたが独特なためになかなか内容がつかめない様子。今度は、うたに舞をつけて披露して頂きます。両方を見聞きした後で、先生から質問を受けます。
「どんな様子だったと思いますか?」「何人の登場人物が出てきたと思いますか?」
先生にヒントを出してもらいますが、なかなか情景がつかめません。

「『明けの明星』というのは、日の出前のこと。このうたはきれぎぬの別れのシーンで、男が明るくなって顔が見える前に、女のもとを去る場面です。」と答えを聞き、「あ~」と生徒さんから納得の声が上がりました。

日本舞踊と狂言の動きと比べて見せてもらい、能楽は武家のたしなみだけあり、艶っぽさの無い動きで理解するのが難しかったようです。

■扇で酒を飲む?

今度は、金や銀色の輝く狂言専用の綺麗な扇が生徒さんのもとに配られます。普段はなかなか触ることのない扇なだけに、慎重に扱わなくてはなりません。右手で骨の部分を持ち、開く場合は骨を束ねて固定している要の部分に指をあて、両手でゆっくりとずらすように動かします。決して殿様の様に「ばさっ」と力任せに開いてはいけません!

続いては演技を体験。生徒さんで二人一組に向かい合って座り、一方は水平に保った扇から、「どぶっ、どぶっ、どぶっ、どぶどぶどぶ」という台詞に合わせ、扇で酒を注ぎます。もう一方は、にやけた顔で杯に見立てた扇をこぼれないように徐々に上へ持ち上げて、なみなみに注がれた酒を喜色満面の顔で飲み干し、最後に「おおう! あるあるある」と一言。

■立ち上がるのも一苦労!

続いて、正座からの立ち上がりと立ち上がった状態から座るまでの動きを教わります。
重心を少し前に持って行き、右足は膝を少し浮かせ、左足を少し前に出し、そのまますっと立ち上がります。同じ流れで座るのですが、これが慣れないと綺麗に動けません。


■狂言のなが~い歴史は二時間では語りきれず!

狂言の内容はいわゆる古典。先生は言葉に大変敏感になってしまうと言います。
語源をあまり気にせず変化する現代語が増えていますが、言葉の語源を知ることで過去の日本を知る事ができることを普段生活しているとなかなか気がつきません。二時間の短い時間では狂言や笑いの長いの歴史は語りきれず、「また第二回目の授業をしたい」という先生のお言葉に、生徒さんもスタッフも期待が高まります。


狂言はもともと庶民に向けられて演じられていたものなので、学んでいく内に自然と室町時代からの人々の生活や言葉や文化まで触れることが
出来たような感覚になりました。授業後に生徒さんから話しを聞くと「発声の仕方も習いたかった」などの要望も。第二回目の授業を期待しつつ、解散。

11月からは、狂言だけでなく、さまざまな伝統芸能に出会う一ヶ月「やっとかめ文化祭」がはじまります。授業に出た人も出てないひとも、名古屋市内各所で伝統文化に触れることができる貴重な機会ですよっ!


(レポート担当:ボランティアスタッフ 本多由季
 カメラ担当:ボランティアスタッフ 前田智絵 )

※写真をクリックすると拡大します。


 

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先生

十四世 野村又三郎 / 狂言方和泉流野村派当主

能楽師狂言方和泉流、公益社団法人能楽協会正会員・名古屋支部常議員
和泉流三派の一つである野村派の十三世当主・故野村又三郎信廣(重要無形文化財総合指定保持者)の嫡男、父に師事。
2011年5月 十四世 野村又三郎を襲名(前名/四世 野村小三郎)。
2014年7月 文化庁より重要無形文化財総合指定認定の答申を得る。

南山学園高等学校卒業
国立東京藝術大学 音楽学部邦楽科 卒業
国立東京藝術大学 音楽学部別科邦楽 修了

HP:http://kyogen.net/

今回の教室

名古屋市短歌会館

住所:名古屋市中区錦2-13-22
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