授業詳細
CLASS
赤ちゃんのいるデイサービス
~固定観念をひっくり返す考え方~
開催日時:2016年09月22日(木) 13時30分 ~ 15時00分
教室:笑々(にこにこ)
レポートUP
先生:
渡辺 潤平 / 株式会社イノベイティブ・デザインキュー 取締役
カテゴリ:【くらし、コミュニケーション】
定 員 :8人
・参加費として1,000円を頂戴します。
・電車をご利用の方は、豊橋駅へ13:10にお越しください。駅からスタッフが車で送迎いたします(当日の緊急連絡先:070-5459-8213)。
・車をご利用の方は、教室隣の無料駐車場をご利用いただけます。
まずは、この写真をご覧ください。・電車をご利用の方は、豊橋駅へ13:10にお越しください。駅からスタッフが車で送迎いたします(当日の緊急連絡先:070-5459-8213)。
・車をご利用の方は、教室隣の無料駐車場をご利用いただけます。
これ、デイサービスの風景なんです。
愛知の東側・豊橋に、赤ちゃんのいるデイサービス「笑々(にこにこ)」があります。
元焼肉屋の内装を活かした、デイサービスっぽさを感じさせない空間。
ここではいつも子どもがぱたぱたと走り回り、それを笑顔で見つめるお年寄りがいます。
スタッフは自分の子どもを職場で遊ばせながら安心して働くことができ、施設を利用するお年寄りは、スタッフの子どもたちと出会うことで様々な刺激を受けることができ、子どもは、お年寄りや体の不自由な方に対する明るい意識を育むことができる場となっています。
一石三鳥ともいえるこの仕組み。代表の渡辺さんが長年取り組んで感じているのが“役割”の持つ力だそうです。
いわゆる家族の成り立ちは、大人・子ども・お年寄りといった構成ですが、大人とお年寄りしかいない介護施設ではお年寄りが「子ども」の役割を担ってしまう場合があり、介護業務がスムーズに行えないのではと考えたとのこと。
笑々ではスタッフが利用者さんに「ありがとう」という機会が多いそうです。例えば小さな子どもが走り回っているときに「そっち危ないぞー」とお年寄りが声をかけ、スタッフが「見ててくれてありがとう」とお礼を言う…本来の役割に立ち戻ることで、お互い補完し合う無理のない関係が自然と生まれてくるそうです。
今回の授業では、まずこの空間「笑々」を見学します。
多様な方々が同じ空間でそれぞれのペースで過ごしている様子に、きっと居心地の良さを感じていただけるはず。
そして、これまでの取り組みを通じて渡辺さんが感じてきた“役割”の持つ威力、また笑々を続けていくうえで妨げとなった常識や固定観念に対する発想の転換について実例を交えてご紹介いただきます。
例えば地震の多い日本では、かつて建物は「壊れるか壊れないか」といった「0か100か」の視点で、完璧なものを造るという考えが主流でしたが、いつからか「どんな条件ならばどれくらい壊れるのか?」といった柔軟でしなやかな考え方へ変わっていきました。
こんな風に、もしかしたら仕事やお金についても発想の転換ができるのではないか。
仕事に人を当てはめるのではなく、その人が必要としていることやできることから仕事を作っていくことができるのではないか。
そんなあれこれを、赤ちゃんの泣き声やお年寄りの笑い声が響く「笑々」の中で
ぜひ一緒に語り合ってみましょう。
デイサービスはまだまだ自分には関係ないとあなどるなかれ。
いつか親や自分自身がお世話になるとき、どんな施設なら心穏やかに過ごせるだろう?
そんな視点で眺めてみるのもいいかもしれません。
13:20 受付開始
13:30 自己紹介
13:35 笑々見学
14:00 先生のお話・ディスカッション
14:50 記念撮影
15:00 授業終了
授業コーディネーター:井上麻衣、荒木萌
まず「授業情報」のページを見てください。
『まずは、この写真をご覧ください。
これ、デイサービスの風景なんです。』
という言葉とともに、写真が載っています。みなさんの「デイサービス」のイメージはどんなものですか? 今回の授業は、多くの人が持っているであろう「デイサービス」のイメージをひっくり返すものでした。
会場は、愛知県豊橋市にあるデイサービス「笑々」(「にこにこ」と読みます)さん、先生はデイサービスを運営している株式会社イノベイティブ・デザインキュー取締役の渡辺潤平さんです。
授業では、最初に先生に「笑々」の中を案内していただきました。もともとは焼き肉屋さんだった店舗を改装したとのこと。言われてみれば、座敷の部分があったり、固定されたテーブルと椅子がそのままだったりしています。水回りもうまく活かして、キッチンも広くとってあります。
「イメージされるデイサービスより薄暗いでしょう」と先生が言われて、確かに!とはっとしました。明るい色の壁に明るい照明、というのがデイサービスのイメージですが、「笑々」の壁は茶色や黒で、全体に「家」のイメージが強くなっています。
「隠れる場所があるのがいいんですよ」とも言われていました。それも確かに!とはっとしました。デイサービスは全体が見渡せるほうが良く、その方が開放感があるのも事実ですが、「笑々」には半個室のような空間がいくつもあり、それもまた「家」のイメージに近くなっています。
そして何より、子どもたちが走り回り、思い思いに遊び、その中でデイサービスの利用者さんが歌を歌ったり、リハビリをしたり、新聞を読んだり、思い思いに過ごされている。渡辺さんが自己紹介の中で言われた合い言葉「仕事じゃないよ。暮らしだよ。」がまさに当てはまる、みんなが「暮らす」みんなの「家」みたいな空間です。
その後、そんな空間の座敷で、渡辺さんのお話を聞きました。渡辺さんがこのような形のデイサービスを始められたのは、介護業界が抱える大きな問題である介護の担い手不足をどうしたら解消できるだろうかと考えていった結果。従来の介護職は、やることばかりが多く、大変で、担い手にとってはデメリットが多い…のですが、「笑々」では、「子育てしながら働ける」ということが介護の担い手側にとって大きなメリットになっています。
小さな赤ちゃんや走り回る子どもたちは、従業員の子どもたちです。働いている人々は、子育てをみんな(従業員、利用者さん問わず)でシェアすることができ、子どもたちにとっては幅広い世代の人々とふれあえる大切なコミュニティができます。
このように三世代の人々(お年寄り、若い世代、子どもたち)が同じ場所で「暮らす」ことによって、それぞれがそれぞれの役割を担うことができる、と渡辺さんは言います。従来のお年寄りを若い世代が介護するというデイサービスでは、利用者さんはサービスを受ける側として、「子ども」のような役割を担っていってしまうことがあるそうです。
それが、赤ちゃんのいるデイサービスでは、お年寄りがお年寄りとして振るまうことでサービスする側とされる側という感覚がなくなる(「サービスを超えたサービス」と表現されています)だけでなく、自分たちがつなげていく次の世代(子どもたち)に未来を見ながら暮らしていくことができます。
渡辺さんはお話の中で、「にこにこモデル(仮)」として「(利用者+スタッフ+子ども)×笑顔=(偽)家族」というモデルを出されました。利用者もスタッフも子どもも笑顔で楽しそうな「笑々」の中にいると、このことが実感として染み渡るように感じられます。
お話の後は、生徒さんが思い思いの質問をし、渡辺さんとのディスカッションで盛り上がりました。赤ちゃんのいるデイサービスを立ち上げるときの苦労(行政とのやりとりなど)や、最初は慣れない従業員が自分の子どもをあやすのをためらってしまうこと(慣れる必要があるそう)、子どもはただいるだけで子どもありきのプログラムを作ったりしないこと、利用者さんの要介護度を実際より低く見られる(そのように見えるような空間である)こと、従業員の子どもが病気の時には一緒に休めるくらいの人数で働いていること… 少人数で行われた授業で、興味を持って参加された方が多く質問も活発に出て、渡辺さんもざっくばらんに答えてくださり、とても有意義な時間になったと思います。
「持続可能な居場所づくり」これを介護の世界で実現するのは果てしなく難しいことに思えます。「持続可能に」と、どの業界でもよく言われますが、どれだけきれいな絵を描いても理想論で終わってしまう… 介護の問題だけでなく、社会には様々な解決不可能に思える問題があります。でも、渡辺さんが言われたように、そこにいるすべての人にとって良いことがあり、何より嬉しく楽しく夢中になれることの中に、問題解決のポイントがある!と、今回の授業では強く感じることができました。「笑々」はまさにそんな空間です。
その空間の中にいさせてもらえたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
レポート 鈴木梨恵子
写真 荒木萌、井上麻衣
『まずは、この写真をご覧ください。
これ、デイサービスの風景なんです。』
という言葉とともに、写真が載っています。みなさんの「デイサービス」のイメージはどんなものですか? 今回の授業は、多くの人が持っているであろう「デイサービス」のイメージをひっくり返すものでした。
会場は、愛知県豊橋市にあるデイサービス「笑々」(「にこにこ」と読みます)さん、先生はデイサービスを運営している株式会社イノベイティブ・デザインキュー取締役の渡辺潤平さんです。
授業では、最初に先生に「笑々」の中を案内していただきました。もともとは焼き肉屋さんだった店舗を改装したとのこと。言われてみれば、座敷の部分があったり、固定されたテーブルと椅子がそのままだったりしています。水回りもうまく活かして、キッチンも広くとってあります。
「イメージされるデイサービスより薄暗いでしょう」と先生が言われて、確かに!とはっとしました。明るい色の壁に明るい照明、というのがデイサービスのイメージですが、「笑々」の壁は茶色や黒で、全体に「家」のイメージが強くなっています。
「隠れる場所があるのがいいんですよ」とも言われていました。それも確かに!とはっとしました。デイサービスは全体が見渡せるほうが良く、その方が開放感があるのも事実ですが、「笑々」には半個室のような空間がいくつもあり、それもまた「家」のイメージに近くなっています。
そして何より、子どもたちが走り回り、思い思いに遊び、その中でデイサービスの利用者さんが歌を歌ったり、リハビリをしたり、新聞を読んだり、思い思いに過ごされている。渡辺さんが自己紹介の中で言われた合い言葉「仕事じゃないよ。暮らしだよ。」がまさに当てはまる、みんなが「暮らす」みんなの「家」みたいな空間です。
その後、そんな空間の座敷で、渡辺さんのお話を聞きました。渡辺さんがこのような形のデイサービスを始められたのは、介護業界が抱える大きな問題である介護の担い手不足をどうしたら解消できるだろうかと考えていった結果。従来の介護職は、やることばかりが多く、大変で、担い手にとってはデメリットが多い…のですが、「笑々」では、「子育てしながら働ける」ということが介護の担い手側にとって大きなメリットになっています。
小さな赤ちゃんや走り回る子どもたちは、従業員の子どもたちです。働いている人々は、子育てをみんな(従業員、利用者さん問わず)でシェアすることができ、子どもたちにとっては幅広い世代の人々とふれあえる大切なコミュニティができます。
このように三世代の人々(お年寄り、若い世代、子どもたち)が同じ場所で「暮らす」ことによって、それぞれがそれぞれの役割を担うことができる、と渡辺さんは言います。従来のお年寄りを若い世代が介護するというデイサービスでは、利用者さんはサービスを受ける側として、「子ども」のような役割を担っていってしまうことがあるそうです。
それが、赤ちゃんのいるデイサービスでは、お年寄りがお年寄りとして振るまうことでサービスする側とされる側という感覚がなくなる(「サービスを超えたサービス」と表現されています)だけでなく、自分たちがつなげていく次の世代(子どもたち)に未来を見ながら暮らしていくことができます。
渡辺さんはお話の中で、「にこにこモデル(仮)」として「(利用者+スタッフ+子ども)×笑顔=(偽)家族」というモデルを出されました。利用者もスタッフも子どもも笑顔で楽しそうな「笑々」の中にいると、このことが実感として染み渡るように感じられます。
お話の後は、生徒さんが思い思いの質問をし、渡辺さんとのディスカッションで盛り上がりました。赤ちゃんのいるデイサービスを立ち上げるときの苦労(行政とのやりとりなど)や、最初は慣れない従業員が自分の子どもをあやすのをためらってしまうこと(慣れる必要があるそう)、子どもはただいるだけで子どもありきのプログラムを作ったりしないこと、利用者さんの要介護度を実際より低く見られる(そのように見えるような空間である)こと、従業員の子どもが病気の時には一緒に休めるくらいの人数で働いていること… 少人数で行われた授業で、興味を持って参加された方が多く質問も活発に出て、渡辺さんもざっくばらんに答えてくださり、とても有意義な時間になったと思います。
「持続可能な居場所づくり」これを介護の世界で実現するのは果てしなく難しいことに思えます。「持続可能に」と、どの業界でもよく言われますが、どれだけきれいな絵を描いても理想論で終わってしまう… 介護の問題だけでなく、社会には様々な解決不可能に思える問題があります。でも、渡辺さんが言われたように、そこにいるすべての人にとって良いことがあり、何より嬉しく楽しく夢中になれることの中に、問題解決のポイントがある!と、今回の授業では強く感じることができました。「笑々」はまさにそんな空間です。
その空間の中にいさせてもらえたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
レポート 鈴木梨恵子
写真 荒木萌、井上麻衣
先生
渡辺 潤平 / 株式会社イノベイティブ・デザインキュー 取締役
1981年生まれ。北海道函館市出身。一児の父。 地元高専卒業後、豊橋技術科学大学にて博士号(工学)を取得。在学中、仲間と共にNPOや株式会社を設立。 現在は、「仕事じゃないよ、暮らしだよ。」を合言葉に、子どもを中心とした様々な「ひと」が参加できる新しい介護の体系化に取り組んでいる。つもり。 デイサービスを開放せよ!子連れで働く実験ノート。
今回の教室
笑々(にこにこ)
住所:愛知県豊橋市佐藤3丁目19-13
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豊橋市にある地域密着型通所介護事業所。介護施設でありながら、子育てや暮らしの拠点を目指している。元焼肉屋の建物は、介護施設っぽさを感じさせないと、利用者さんやケアマネさんたちから好評を得ている。現在、地域に開くデイサービスの形を実験している。
(施設は、バリアフリー・車いす対応)