授業詳細
CLASS
Don’t think. Feel!!! みんなのディスコへ!
開催日時:2019年09月28日(土) 10時30分 ~ 16時30分
教室:可児市文化創造センター アーラ
レポートUP
先生:
澤村潤 / 公益財団法人可児市文化芸術振興財団 事業制作課 係長
カテゴリ:【コミュニケーション】
定 員 :20人
参加費:ドネーション(お気持ち制)<事務局費、講師交通費・謝金>
Don't think. Feel !!!…と言ったのは、ブルースリー。
言葉にすると何か違うんだなあ、と思うとき、
考えるより感じるほうが早いことがあります。
私にとっては、福祉や障害という言葉がそれ。
難しく考えないで。みんなただの人間です。
岐阜県可児市文化創造センター・アーラは、
「社会的包摂型劇場」として全国から注目を集めている公立文化施設です。
私は、アーラで毎年開催されている「みんなのディスコ」に行きたくてしょうがない。
「みんなのディスコ」とは、障がいや国籍などを越えて音楽を楽しむイベント。
せっかく行くなら、このイベントを企画した澤村さんに、
企画成立までの物語をお聞きし、さらにアーラを満喫し、
そして全身でDon't think. Feel!したい!しよう!一緒に!
【タイムスケジュール】(予定)
10:00 受付開始
10:30 授業開始
11:30 アーラ見学、昼食
13:30 みんなのディスコ体験
16:30 みんなのディスコ終了、解散
※この授業は「Don't think. Feel !!!」なので、授業後に感想のシェアはしませんが、盛り上がった場合は参加者で集まってお茶する…かも。
授業コーディネーター名:吉川真以
岐阜県にある可児市文化創造センター・アーラが
主催する名物イベント「みんなのディスコ」は、
障害や国籍などに関わらず、
みんなでとにかく踊ろう!というイベントです。
ライブハウスのような雰囲気のスタジオで、
DJがターンテーブルをまわす。
合間には歌のお兄さんが場を盛り上げ、
地元の高校生や福祉施設のメンバーによる
ダンスステージもある。
ボランティアスタッフの方たちが
装飾したハロウィンの飾りつけも素晴らしく、
本来のディスコに
「親しみやすさ」をプラスしたような雰囲気です。
私が「みんなのディスコ」で
感動したことは3つあります。
1つ目は、
終始、障害のある子どもたちが
本当に楽しそうに踊っていたことです。
もちろん、
「踊りましょう」というイベントなのだから
当たり前といえばそうなのですが、
私も含めた大ナゴヤメンバーは、
踊れずに立ちすくんでいました。
まわりを見ると、なんと、普段ダンス部で
踊りまくっているはずの高校生たちも
所在無げにしていました。
「障害あるなし」で分けたくないですが、
これは明らかに、障害のある子どもたちの方が
「素直」だったと思います。
なぜ踊れないのか。
私たちは恥ずかしさを捨てるため、
アーラのボランティアスタッフの方が
用意してくれた“仮装グッズ”で
「普段のわたし」を変化させ、
それを和らげたのでした。
2つ目は、
そんな私たちもだんだんその場に慣れてきて、
ぎこちなくも踊れるようになった頃のこと。
高校生の数名が、障害のある子どもたちと
積極的に話している姿がありました。
すると、その子たちがフロアで
「ダンスバトル」をはじめました。
少数から始まったそれは、
気が付くと大きな円を描き、
ダンスが終わると「ふ~~~!」
と言ってハイタッチ。DJの方が
「普段のイベントだと、
みんな僕らの方を見て踊るんだけど、
今回はひとりもそういう人がいなくて、
みんな純粋に音を聴いて踊っていた。
それが嬉しかった」
と言っていたのも印象的でした。
3つ目は、
終わった後の控室での出来事。
装飾で使われていた風船を誰かがトス。
すると、それを誰かがまたトス。
誰が言うわけでもなく、
高校生と障害のある子どもたちの風船バレーが
自然と始まったのです。
そこには「障害あるなし」関係ない、
ただ楽しい、幸せな空間がありました。
まさに、この「みんなのディスコ」が
目的とするところではないでしょうか。
私たちはこのイベントに参加する前に、
企画者であるアーラの澤村さんから
館内を案内していただき、
なぜこういった企画をしたのか、
お話をうかがいました。
アーラは岐阜県可児市の公共ホールで、
市政20周年を記念して2002年にオープンしました。
それまで、市には人々が集う場所が
十分になかったため、アーラには
「公民館」的な機能も兼ね備える必要がありました。
アーラの中には大小の会議室があり、
平日でも、
市民や企業の方々によって賑わっています。
つまり、「文化芸術」に関わらず、
様々な理由で市民が集う場となっているのです。
集うと言えば、共有スペースが広いことも
アーラの特徴です。
ロビーの机では勉強している学生や、
市民たちの談笑する姿が多くありました。
なんと、閉館時間は夜の10時30分。
公共施設でこれほど遅い時間まで
やっているところは珍しいのではないでしょうか。
アーラは、1019席の主劇場から、
311席の小劇場、100席の映像シアター、
そして市民が利用できるギャラリーや
音楽スタジオ、大道具まで作れる制作室など、
素晴らしい設備が整っている空間に、
図書館やカフェ、会議室、
さらに心地の良い芝生がある。
単なる公共ホールの枠を超えた、
“行く理由がありすぎる”公共ホールなのです。
ここで、
一般的な「公共ホール」の話をしたいと思います。
公共ホールは、全国で2000以上ある
と言われているそうです。「公共施設」と言うと、
学校や病院など、
“地域になくてはならないもの”
が浮かびますが、
じゃあ、「公共ホール」はどうなのか。
“なくてはならないもの”なのでしょうか。
1960年代の高度経済成長から
90年代のバブル期にかけて、
たくさんの公共ホールが建てられました。
好景気だと、
そのホールが活用されて
お客さんも入ったようですが、
バブルの崩壊とともにそれが崩れ、
公共ホールに対して「ハコモノ」批判が高まりました。
その批判を回避するために、
90年代後半からワークショップや
市民参加の公演が一気に広まったのですが、
その、“一見いいこと”とは裏腹に、
一部の愛好家しか来ない、
非常に閉じたコミュニティが
形成されてしまった面もありました。
『税金で運営しているのに、
すべての市民のためになっているのか?
いま、地域は何を必要としているのだろうか?』
そこでアーラは考えました。
地域コミュニティの関係性が希薄になり、
家族の細分化が進み、非正規雇用の増加、
経済格差の拡大…と、
孤立しやすい社会になってきたいま、
『人を孤立させない、
新しいコミュニティ広場が必要なのでは』と。
「貧困」には3つの貧困があると言います。
それは「経済的」貧困、「つながり」の貧困、
そして、「自尊心」の貧困です。
『経済的貧困以外の2つは、
劇場が改善出来ることなのではないか』─。
そんなミッションを掲げたアーラでは、
今回の「みんなのディスコ」のほかにも、
様々なプログラムが行われています。
例えば、国籍関わらずみんなで
演劇をつくりあげる「多文化共生プロジェクト」。
寄付によって、
子どもたちと経済的支援を受けているご家族に
鑑賞チケットをプレゼントする
「私のあしながおじさんプロジェクト」。
地元の学校や福祉施設などへの
出張演劇ワークショップ、などなど。
特に、地元の学校での演劇ワークショップは、
その学校の中退者を30人も
減らしたという実績があります。
アーラの館長である衛紀生さんは、
アーラの役割についてこう説明します。
「『生きづらさ』や『生きにくさ』を感じている人々を、
文化芸術の力を活用して精神的にも社会的にも
孤立させない。私たちがやっていることは、
文化芸術の機能を利用して、
【承認欲求を充足してくれる他者と出会うこと】
によって、
前を向いて生きる力を得てもらうことなんです」。
まさに、地域にとって
“なくてはならない公共ホール”
が、アーラなのです。
文化芸術は、一見、その効果が見えにくいもの
かも知れません。
しかし、今回のイベントで私たちが感じたものは、
確実に、それぞれの心の中に蓄積されました。
それは勿論すべての参加者、
ダンス部の高校生や障害のある子どもたち、
その親御さん、市民のみなさん、すべての人に。
それが後に
どんな効果が出てくるのかわかりません。
明日かも知れないし、10年後かも知れない。
でもその蓄積が、「つながり」の貧困や
「自尊心」の貧困から必ず救ってくれる
と思うのです。
こういった姿勢は、公共ホールのみならず、
全国のあらゆるコミュニティが担うべき役割
なのではないでしょうか。
「人を孤立させない、
新しいコミュニティ広場」がもっともっと必要です。
レポート:吉川真以
写真:大野嵩明
主催する名物イベント「みんなのディスコ」は、
障害や国籍などに関わらず、
みんなでとにかく踊ろう!というイベントです。
ライブハウスのような雰囲気のスタジオで、
DJがターンテーブルをまわす。
合間には歌のお兄さんが場を盛り上げ、
地元の高校生や福祉施設のメンバーによる
ダンスステージもある。
ボランティアスタッフの方たちが
装飾したハロウィンの飾りつけも素晴らしく、
本来のディスコに
「親しみやすさ」をプラスしたような雰囲気です。
私が「みんなのディスコ」で
感動したことは3つあります。
1つ目は、
終始、障害のある子どもたちが
本当に楽しそうに踊っていたことです。
もちろん、
「踊りましょう」というイベントなのだから
当たり前といえばそうなのですが、
私も含めた大ナゴヤメンバーは、
踊れずに立ちすくんでいました。
まわりを見ると、なんと、普段ダンス部で
踊りまくっているはずの高校生たちも
所在無げにしていました。
「障害あるなし」で分けたくないですが、
これは明らかに、障害のある子どもたちの方が
「素直」だったと思います。
なぜ踊れないのか。
私たちは恥ずかしさを捨てるため、
アーラのボランティアスタッフの方が
用意してくれた“仮装グッズ”で
「普段のわたし」を変化させ、
それを和らげたのでした。
2つ目は、
そんな私たちもだんだんその場に慣れてきて、
ぎこちなくも踊れるようになった頃のこと。
高校生の数名が、障害のある子どもたちと
積極的に話している姿がありました。
すると、その子たちがフロアで
「ダンスバトル」をはじめました。
少数から始まったそれは、
気が付くと大きな円を描き、
ダンスが終わると「ふ~~~!」
と言ってハイタッチ。DJの方が
「普段のイベントだと、
みんな僕らの方を見て踊るんだけど、
今回はひとりもそういう人がいなくて、
みんな純粋に音を聴いて踊っていた。
それが嬉しかった」
と言っていたのも印象的でした。
3つ目は、
終わった後の控室での出来事。
装飾で使われていた風船を誰かがトス。
すると、それを誰かがまたトス。
誰が言うわけでもなく、
高校生と障害のある子どもたちの風船バレーが
自然と始まったのです。
そこには「障害あるなし」関係ない、
ただ楽しい、幸せな空間がありました。
まさに、この「みんなのディスコ」が
目的とするところではないでしょうか。
私たちはこのイベントに参加する前に、
企画者であるアーラの澤村さんから
館内を案内していただき、
なぜこういった企画をしたのか、
お話をうかがいました。
アーラは岐阜県可児市の公共ホールで、
市政20周年を記念して2002年にオープンしました。
それまで、市には人々が集う場所が
十分になかったため、アーラには
「公民館」的な機能も兼ね備える必要がありました。
アーラの中には大小の会議室があり、
平日でも、
市民や企業の方々によって賑わっています。
つまり、「文化芸術」に関わらず、
様々な理由で市民が集う場となっているのです。
集うと言えば、共有スペースが広いことも
アーラの特徴です。
ロビーの机では勉強している学生や、
市民たちの談笑する姿が多くありました。
なんと、閉館時間は夜の10時30分。
公共施設でこれほど遅い時間まで
やっているところは珍しいのではないでしょうか。
アーラは、1019席の主劇場から、
311席の小劇場、100席の映像シアター、
そして市民が利用できるギャラリーや
音楽スタジオ、大道具まで作れる制作室など、
素晴らしい設備が整っている空間に、
図書館やカフェ、会議室、
さらに心地の良い芝生がある。
単なる公共ホールの枠を超えた、
“行く理由がありすぎる”公共ホールなのです。
ここで、
一般的な「公共ホール」の話をしたいと思います。
公共ホールは、全国で2000以上ある
と言われているそうです。「公共施設」と言うと、
学校や病院など、
“地域になくてはならないもの”
が浮かびますが、
じゃあ、「公共ホール」はどうなのか。
“なくてはならないもの”なのでしょうか。
1960年代の高度経済成長から
90年代のバブル期にかけて、
たくさんの公共ホールが建てられました。
好景気だと、
そのホールが活用されて
お客さんも入ったようですが、
バブルの崩壊とともにそれが崩れ、
公共ホールに対して「ハコモノ」批判が高まりました。
その批判を回避するために、
90年代後半からワークショップや
市民参加の公演が一気に広まったのですが、
その、“一見いいこと”とは裏腹に、
一部の愛好家しか来ない、
非常に閉じたコミュニティが
形成されてしまった面もありました。
『税金で運営しているのに、
すべての市民のためになっているのか?
いま、地域は何を必要としているのだろうか?』
そこでアーラは考えました。
地域コミュニティの関係性が希薄になり、
家族の細分化が進み、非正規雇用の増加、
経済格差の拡大…と、
孤立しやすい社会になってきたいま、
『人を孤立させない、
新しいコミュニティ広場が必要なのでは』と。
「貧困」には3つの貧困があると言います。
それは「経済的」貧困、「つながり」の貧困、
そして、「自尊心」の貧困です。
『経済的貧困以外の2つは、
劇場が改善出来ることなのではないか』─。
そんなミッションを掲げたアーラでは、
今回の「みんなのディスコ」のほかにも、
様々なプログラムが行われています。
例えば、国籍関わらずみんなで
演劇をつくりあげる「多文化共生プロジェクト」。
寄付によって、
子どもたちと経済的支援を受けているご家族に
鑑賞チケットをプレゼントする
「私のあしながおじさんプロジェクト」。
地元の学校や福祉施設などへの
出張演劇ワークショップ、などなど。
特に、地元の学校での演劇ワークショップは、
その学校の中退者を30人も
減らしたという実績があります。
アーラの館長である衛紀生さんは、
アーラの役割についてこう説明します。
「『生きづらさ』や『生きにくさ』を感じている人々を、
文化芸術の力を活用して精神的にも社会的にも
孤立させない。私たちがやっていることは、
文化芸術の機能を利用して、
【承認欲求を充足してくれる他者と出会うこと】
によって、
前を向いて生きる力を得てもらうことなんです」。
まさに、地域にとって
“なくてはならない公共ホール”
が、アーラなのです。
文化芸術は、一見、その効果が見えにくいもの
かも知れません。
しかし、今回のイベントで私たちが感じたものは、
確実に、それぞれの心の中に蓄積されました。
それは勿論すべての参加者、
ダンス部の高校生や障害のある子どもたち、
その親御さん、市民のみなさん、すべての人に。
それが後に
どんな効果が出てくるのかわかりません。
明日かも知れないし、10年後かも知れない。
でもその蓄積が、「つながり」の貧困や
「自尊心」の貧困から必ず救ってくれる
と思うのです。
こういった姿勢は、公共ホールのみならず、
全国のあらゆるコミュニティが担うべき役割
なのではないでしょうか。
「人を孤立させない、
新しいコミュニティ広場」がもっともっと必要です。
レポート:吉川真以
写真:大野嵩明
先生
澤村潤 / 公益財団法人可児市文化芸術振興財団 事業制作課 係長
98年から東京グローブ座にて「グローブ座春のフェスティバル」「子供のためのシェイクスピアシリーズ」の制作を担当。02年より可児市文化創造センター。演劇・ダンス事業のチーフとしてala Collectionシリーズなど数々のプロデュース作品の制作に携わる。また、ワークショップやアウトリーチなどの様々な地域支援プログラムを手掛ける。11年に文化庁新進芸術家留学制度により80日間イギリスに留学。
今回の教室
可児市文化創造センター アーラ
住所:〒509-0203 岐阜県可児市下恵土3433-139
※名鉄 日本ライン今渡駅(タクシー5分、徒歩10分)
※JR 可児駅(タクシー10分、徒歩30分)
地図を見る
「ここは『芸術の殿堂』ではなく、みんなの思い出が詰まった『人間の家』」。岐阜県可児市にある、地域に密着した公立文化施設。