授業詳細

CLASS


戦争ってなんだ?〜私たちの暮らしの平和と安全について考える

開催日時:2022年04月09日(土) 10時00分 ~ 12時30分

教室:TOUTEN BOOKSTORE

レポートUP

先生: アーヤ藍 /
小野山 亮 / 平和村ユナイテッド代表理事
小原 智恵 / 朝日新聞名古屋報道センター

カテゴリ:【国際/コミュニケーション/大ナゴヤの日】

定 員 :8人

※本授業は「大ナゴヤの日」の授業として企画しております。毎月第二土曜日は参加費無料の授業として開催しています。
※店内にて1drinkお願いしております。
※授業中は換気を徹底するなどして、感染対策に努めてまいります。生徒の皆様におかれましても、マスクの着用と手指消毒にご協力をお願いいたします。
※申込締切:4/8(金)13時まで
「戦争」の反対ってなんでしょうか?平和や安全でしょうか?

現在、ロシアのウクライナ侵攻により、世界は大きく揺れています。
一方で、ウクライナやロシアに限らず、第二次世界大戦以降も、さまざまな地域で紛争や虐殺といった暴力が生まれ、今もなお続いているという事実をどのくらいの人たちが知っているでしょうか。
メディアやSNSから届く情報だけでは自分ごととしにくい「戦争」の話題。そんな社会情勢と私たちが実感している社会に乖離があるのでは?という疑問から今回の授業をつくりました。


今回の授業では「戦争」についてさまざまな視点から見つめ直し、私たちが社会に対してできることを一緒に考えましょう。

本授業に参加いただく先生方は、世界の様々な国で「戦争」による国家や市民に対する影響を肌で感じたことがある方々。クロストークでは先生方それぞれの視点から戦争のリアルを語っていただき、少し違う角度や距離感から「戦争」について触れます。
1人は、学生時代の短期留学先で、大好きになったシリアという国が、帰国直前から紛争状態となり、現地の友人たちがそこに巻き込まれていくという社会の変化に触れてきた経験があるアーヤさん。
2人目は、40年以上紛争状態が続くアフガニスタンで活躍するNGO「平和村ユナイテッド」の小野山さん。平和な社会を取り戻そうと地道な平和活動を続ける同国の人たちを10年以上に渡って伴走して応援しています。
最後に、朝日新聞の小原さん。小原さんは紛争ではありませんが、イラン滞在時に間接的ではありますが、核開発に対する国際的な制裁を体験することになりました。
(※小野山さん、アーヤさんはオンラインで、小原さんは会場にてご登壇いただきます。)

さて、最初の問いに対して、「戦争の反対は平和だ」と答える人もいるでしょう。実は、戦争の反対は“Warlessmess(戦争がない状態)”。つまり、戦争がないという状態が、平和という状態ではないのです。それでは、いったい私たちの平和や安全はどこからやってくるのでしょうか。

この世界をちょっといいものにしたい。そんな気持ちで授業を企画しております。普段なかなか腰を据えて誰かと話し合えない話題を、参加生徒の皆さんと考える機会になると幸いです。


<スケジュール> 
9:45 〜 受付開始(1drinkご注文ください)
10:00 〜 授業開始:趣旨説明、自己紹介
10:10 〜 クロストーク
11:30 〜 生徒ディスカッション
12:10 〜 フリカエリ
12:30 〜 終了・集合写真



【授業参加にあたり】
本授業は、現在の国際情勢、ロシアとウクライナの関係や、ウクライナ侵攻について解説する内容ではございません。ご理解ご了承の上ご参加ください。

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【感染症予防および拡散防止対策へのご協力のお願い】
・飛沫感染防止のため、授業中のマスク着用をお願いいたします。
・受付時の、検温と手指消毒にご協力ください。
・ご参加より14日以内に新型コロナウイルス感染症への罹患が確認された場合には、大ナゴヤ大学まで速やかにご連絡ください。また、濃厚接触者になった場合も同様とします。
・後日、参加者・関係者の新型コロナウイルス感染症への罹患が確認された場合には、保健所等の公的機関へ個人情報を提供することがあります。

下記に該当する場合、当日の授業参加をお控えください。
・37.5度以上の発熱がある、または発熱が続いている
・咳・くしゃみ・咽頭痛などの症状がある
・新型コロナウイルス感染症の陽性患者の濃厚接触者に該当する
・同居家族や身近な知人に感染が疑われる方がいる
・過去2週間以内に入国制限、入国後の行動制限がある国・地域への渡航歴および当該地在住者との濃厚接触があった
・マスク未着用(2歳未満を除く)

【授業コーディネーター名】

山田卓哉
テレビをつければ、連日ウクライナの厳しい情勢が流れる日々。今、まさに現実世界で起こっている「戦争」。そして私たちの身の周りにある「平和」に思いを巡らせ、言葉にできない感情をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
大ナゴヤ大学では、様々な立ち位置から「平和」を考える授業として、金山・TOUTEN BOOKSTOREさんを会場に「戦争ってなんだ?」を開催しました。
時期としても、内容的にも非常にデリケートな授業。今回の参加いただいた生徒さんは、報道を通して見るウクライナの現実に、それぞれの見方から“モヤモヤ感”を抱え、授業に申し込んでくださった様です。



■先生それぞれが見る戦争と、平和
まずは今回の先生方から、それぞれの経験、立場を通して考える「平和」について、お話を伺います。
一人目の先生はアーヤ藍さん。
アーヤさんは大学在学中の2011年、シリア・アレッポに1か月間滞在しました。シリアでは、現地の人々の温かさが印象深く、この年に起こった東日本大震災を自分のことのように心配してくれたりもしたそう。シリアの人々が大好きになったアーヤさん。旅立ちの日には、シリアの美しい朝陽に「必ずこの場所に帰ってくる」と誓ったのですが、その直後にシリアは内戦状態に陥り、以降11年、再訪の願いは叶っていません。
そんなアーヤさんは、今のウクライナ情勢にシリアが重なって見えると言います。
「喪ったものは決して戻らない。武器は一度手にしたら、それを下ろす時は簡単には来ない。紛争地域のなかにいては、情報発信も、未来に向けた行動も容易にはできない、平和な地域にいる私たちだからこそできることがある」と語られた言葉に、参加した生徒の皆さん、スタッフも思わず息を飲みました。



二人目は小野山亮さん。
「平和をつくる。紛争を止める。」を目的に、一般社団法人平和村ユナイテッドを立ち上げ、アフガニスタンやパキスタンで活動しています。これまで多くのNGOにも携わり、様々な現場で紛争を目の当たりにしてきた小野山さんは、「平和はプロジェクトでなく、プロセス」という考え。一定の期間に、決まった予算がついて特定の行動を行えば平和が訪れる、というものではない。日常的に、それぞれがそれぞれの立ち位置からできることをする。それがまた、次できる行動に繋がり、ひいては平和を作ることに繋がるというお話に、生徒の皆さんもうん、うんと頷いていました。


そして三人目は小原智恵さん。
高校生の頃、イラクの医療支援を行う「セイブ・イラクチルドレン名古屋」でのイラク人医師との出会いを通じて中東に関心を持ち、イラン南部のシーラーズに1年間留学。現在は朝日新聞名古屋報道センターの記者として活動しています。当時、核開発などの影響で経済制裁下にあったイランでは、入手できた日本の新聞などはほとんどが黒塗り。「女性は髪を隠さなければならない」「お酒を飲んではいけない」などイスラム圏の風習もあり、ある種の「抑圧」を感じたといい、実際に現地の方から「日本に移住できないか」と聞かれることもしばしばあったそうです。日本とは異なるそうしたイランの空気を体感して、日本にある見知らぬ平和に気付いたという小原さん。
帰国後は報道記者として、戦争体験者の方の取材記事を執筆するなど、「平和とは何か」をいつも考えるようになったと言います。



■日本にいながら、どうやってフラットな情報にアクセスするか?
その後は、コーディネーターからの質問を投げかける形で、お三方を交えたクロストークの時間。
クロストーク1つ目のテーマは、「日本にいながら、どうやってフラットな情報にアクセスするか?」。
お三方に共通するのは、「様々な人と繋がりを持ち、様々な視点から話をする場があることが重要」という考え。小原さんは報道記者という職業柄、職場で仲間と議論をする機会が多く、アーヤさんは多様なバックグラウンドの人と出会い、SNSで繋がると、自ずとフィードも多様なジャンルや視点の情報が流れてくるようになるそうです。また「情報の正しさはすぐに判断しない」と言います。小野山さんも同様で、SNSなどでできる関係性は、日本人でもアフガニスタンでも同じで、「誰と繋がるかが重要」だと言います。「紛争地帯の平和活動家と繋がるマッチングアプリのようなものがあればいいのに」という、現地のリアルを知る小野山さんならではのアイディアも飛び出しました。



■日本に生きる私たちが、紛争の起こる世界とどう繋がっていけるのか
2つ目のテーマは「日本に生きる私たちが、紛争の起こる世界とどう繋がっていけるのか」。
こちらも三者三様、リアルな体験を通した世界との繋がり方をお話いただきました。
アーヤさんによれば、好きなことや関心ある領域から、その世界に暮らす人々との共通点を見出し、自分事にしていくこと、そして、世界中で似たような紛争が繰り返されてきたからこそ、私たちが未来のために、今起きている問題から学ぶべきことがあるはずだと言います。
小野山さんは、繋がりを通じて現地の豊かさを感じてほしいと言います。現地は、紛争地域ということだけで思うべきではない。人と人の温もりがある。アフガニスタンで、長老を敬う様子に、日本人にも近い感覚や形が感じられるんだとか。そうした生の価値観に触れることが、真の多様性を育むことではないかと言います。
小原さんは、今回の授業のように、話ができる“場”が名古屋にもっと必要だと言います。職業柄、社会に目を向けて考える機会は多いものの、それでも共有する“場”が少なくてモヤモヤしているそうです。



■生徒の皆さんからの声
その後は生徒の皆さんから先生への質問、そしてグループに分かれて感想の共有。
「今、海外で起きていることから日本人は学ばなければいけないと感じた」「戦争についての議論がタブー視され過ぎてきたように思った」「ウクライナ情勢について、なかなか当事者意識を持ちづらかったが、そのモヤモヤを話す機会が持てたことがよかった」など、思い思いの感想を、参加者同士で語り合っていました。



「自分にできることなんてない」「日本は本当に大丈夫?」
今世界で起こっている現実を見て、誰しも、少なからず日々の暮らしの中で、思うことがあるのだと思います。
デリケートな話題であるからこそ、「こんなこと言っては良くないかな」「周りと違う意見だったらどうしよう」など、なかなか日常の中で会話しづらい話題であることも、また事実かもしれません。
この日の授業が、生徒の皆さんのそうした思いを声に出す“場”となって、自分と向き合う、そんな時間になっていれば嬉しいです。
最後に小野山さんから、「特定の限られた活動だけが平和を作るのではない」というお話がありました。特別なことをしなくても、日々の暮らしの中で、世界で起こる出来事と、自分たちとの繋がりを今より少し意識して考えてみる。まずはそれが、私たちが「世界」や「平和」と繋がっていく、はじめの一歩になるのかもしれませんね。



レポート:大島英勲
カメラ:てつ

※写真をクリックすると拡大します。


 

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先生

アーヤ藍 /

2012年慶應義塾大学卒業。在学中、アラビア語の研修でシリア・アレッポに滞在するも、帰国直後から紛争状態になる。情勢が悪化するなか、シリアのために何かしたいという思いが募り、2014年、映画配給会社、ユナイテッドピープル株式会社に入社。シリアの内戦下を生きる青年を追ったドキュメンタリー『それでも僕は帰る』をはじめ、社会的なメッセージが詰まった映画の配給・宣伝に約3年間務める。2018年よりフリーランスとなり、映画イベントの企画運営や、社会課題に関連した記事・冊子のライティング等に携わっている。

小野山 亮 / 平和村ユナイテッド代表理事

1969年生まれ。幼少期に父親が韓国に約7年の単身赴任をしたことを通じ、戦争と平和、民族などについて考え始めるようになりました。 紛争に脅かされる命や暮らし…世界中にある数々の紛争、争い…何とか解決できないのでしょうか… そもそも紛争を止める、平和をつくることを目的とした活動が必要との思いから、活動を展開。 複数のNGO勤務を経て、当団体を2019年に設立。現在、アフガニスタンとパキスタンにて活動を実施。 現地の人びとが、身近な争いごとの解決について学び合い、自身で何らかの平和のためのアクションをしていく活動をサポートしています。 団体サイト: https://pv-u.org/

小原 智恵 / 朝日新聞名古屋報道センター

小原智恵/朝日新聞名古屋報道センター記者 1989年愛知県清須市生まれ。高校生の頃、イラクの医療支援を行っている「セイブ・イラクチルドレン名古屋」でのイラク人医師との出会いを通じて中東に関心を持つ。東京外国語大学ペルシア語専攻に進学。経済制裁下のイラン・シーラーズに1年間留学した。2014年から現職。現在は名古屋の文化などを担当している。 執筆記事は朝日新聞デジタル:https://www.asahi.com/sns/reporter/kohara_chie.html

今回の教室

TOUTEN BOOKSTORE

住所:愛知県名古屋市熱田区沢上1-6-9
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コーヒーやお酒なども楽しむことができるまちの本屋さん。
2階の空間では定期的にさまざまな展示やイベントが開催されている。
open 8:30 - 18:00(土・祝は10:00 - ,金は ~21:00)
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