授業詳細

CLASS


はじまりは一本の糸から~「ひょうたんカフェ」の挑戦から考える福祉のこと、はたらくこと~

開催日時:2019年09月14日(土) 10時00分 ~ 11時30分

教室:MACHEN(マッヘン)

レポートUP

先生: 井上 愛 / NPO法人ひょうたんカフェ 副代表理事・多機能事業所(生活介護・就労継続支援B型)管理者兼サービス管理責任者/ ふくしのふりや

カテゴリ:【くらし】

定 員 :12人

※参加費:500円(ドリンク、焼き菓子<ひょうたんカフェ>)

※本授業の抽選は2019年8月30日(金)に行います。(抽選予約受付は8月30日(金)13時までとなります。)
※抽選後、定員に満たない場合やキャンセルが発生した場合は、2019年9月13日(金)13時00分まで先着順でお申し込みを受け付けます
「福祉ってなんだろ?」

福祉の仕事をしている方や関わっている方に、出会う機会が増えてきました。それもあってか「福祉ってなんだろ?」っと考える時間が、以前よりも増えたように思います。

自分では気づかないうちに「福祉」は、身近な存在になってきているのかもしれない。いつの日か「福祉」という言葉はなくなっていくのだろうか。

このように感じるのは、私だけなのか、そうではないのか?

今回の授業では、「ひょうたんカフェ」の井上さんを先生に迎え、最初に、井上さんが福祉の仕事に関わるようになったきっかけや、事業を立ち上げた想いなど伺います。

井上さんは、「さをり織り※」と出会い、当時勤めていた障害者施設の一角で知的に障害をもつ方々と一緒にさをり織りを始め、その後独立します。この活動を通じて、「できないを手伝うから、できるを見つける」、「仕事を人に合わせるから、人に仕事を合わせる」など、考え方が変わったといいます。



「福祉」の話だけれども、なんだかこれからの「はたらく」の話をしているようでした。

井上さんのお話を聞いた後、改めて「福祉」や「はたらく」ってなんだろ?っと、皆さんと対話していきます。

気軽に「福祉」のこと、「はたらく」ことについて、考えてみませんか?


※「さをり織り」は、1972年に大阪の主婦、城みさをさんによって生みだされた最も簡単な「はた織り」のひとつです。「さをり織り」の理念は、「教えないで引き出す」「思いのままに織る」。色彩や素材・織り方も自由という制約のないところが、既成概念にとらわれない障がいを持つ人たちにも向いており、感性豊かな作品が全国で次々生まれている。


【スケジュール】
9:45 受付開始
10:00 授業開始、自己紹介
10:20 講義(福祉の仕事に関わるようになったきっけ、事業を立ち上げた想いなど)
11:00 感想共有、ワーク
11:30 終了

授業コーディネーター:大野嵩明
「福祉」

あなたはこの言葉に対して
どのようなイメージを持っているでしょうか。

大ナゴヤ大学10周年企画授業の一つとして、
名古屋駅から徒歩10分のところにある
「MACHEN(マッヘン)」で福祉について
考える授業が行われました。

まずは参加者の方々の自己紹介。
「福祉」という言葉に対する
イメージも合わせて聞いてみました。
参加者は福祉に興味があったり、
福祉の現場で働いていたり、
行政関係で福祉と関係していたり
という方が多い印象でした。



「福祉」という言葉に対するイメージとして、
次のようなものが挙げられました。

 ・「暗い」イメージ
 ・ややこやしいイメージ
 ・「奉仕」してあげているという上から目線なイメージ
 ・壁を感じてしまう言葉

全体的にマイナスのイメージを
持った方が多い印象です。

「福祉のものづくりは未来の仕事」

名古屋市中村区にあるNPO法人
「ひょうたんカフェ」の井上愛さんが今回の授業の先生。



「福祉」は敷居の高いイメージがある言葉だ
と思われがちです。
「ひょうたんカフェ」で働いている人について
伝えていく過程で人と人とが繋がり、
その敷居が下げていくことが大切だ
と先生は考えています。

「ひょうたんカフェの誕生」



井上さんは元々障がい者施設の職員を
やられていて、趣味で織物を習っていたそうです。
ある日、織物教室で見つけたのが
「さをり織り」。織物について先生に聞くと、
障害のある方が織ったものをだ
ということを教えて貰いました。

これをきっかけに
「手伝ってあげないといけない」
「助けてあげないといけない」方から
「素敵なことが出来る」方だということに
井上さん自身の支援観が変わったそうです。

そして施設内に織機があることに気付き、
障害を持つ方と一緒に「さをり織り」を始め、
この織りを見ていたいという思いが強くなり、
その後福祉サービスと織りなどを合わせた
NPOを設立。
これがひょうたんカフェの始まりでした。



「ひょうたんカフェ」では日中30人ほど、
織りだけではなくドーナツなどの製造、
絵を描くことなどで皆さん働いているそうです。


「ひょうたんカフェ」では様々な
織りが製造されています。

例えば、「あじろ織り」。
これは畳の模様のような組織織りで、
クリップを使いながら糸を10本ずつ数え、
織るときもこのパターンをきちんと守ってやるものです。
折り紙が得意な方がやられるということで、
きちんとパターンを守る性格を生かして
織られているものです。

「嵐織」。
これは千鳥模様の織り方で、
織られている方がジャニーズの嵐の大ファン。
嵐の5色をイメージして、ベースの色を決めて
織られているものです。

これらの例のように、
糸と個人の要素を結びつけることで、
いろいろな織りを作ることを大切にしているそうです。



「ひょうたんカフェ」では現在、
企業さんや職人さんなどと協働で事業を行っています。

一つは「トヨタ織り」。
トヨタ関連会社の方にボランティアとして、
糸の端切れを繋いでコーンに巻き付ける
「ちょいボラ」を10分程度で行ってもらっているそうです。
この活動でできた糸を織ってできたものもあるそうです。

もう一つは鳴海絞の老舗企業との
コラボレーション。2カ月に1回、職人の方に
鳴海絞りを教えて頂き、
染めたものを商品にしているそうです。
毎回作った数を記録しているそう。
ここで目指しているのは
「伝福連携」という考え方です。

伝統工芸の後継者不足を福祉で補い、
障がい者の方々の持つ新たなアイデアが
価値を生み出すという双方の価値
を生み出そうとしています。



ここで、
障がい者施設の工賃について話して頂きました。
「ひょうたんカフェ」が行っている
就労支援B型施設は月16,000円が全国平均。
「ひょうたんカフェ」ではそれより上で
行っているそうですが、織り方や作っているものが
皆違うなどの理由から人事評価の仕方に悩んだそう。

できるできないことで評価せず、
皆が分かるようなもの。
つまり織った、作った個数、
絵を出展したらなど分かりやすいもので
評価していくという方法を取っているそうです。



さらにもう一つ。
トリココーヒープロジェクトにも協力しています。
トリココーヒープロジェクトは
BeansBirouさんが生み出した
「産地」と「福祉」を繋ぐプロジェクト。

障がい者施設で働くの方にコーヒーを
ハンドピックというコーヒー豆の
選別作業をしてもらったり、
パッケージ用に絵を描いてもらったり
することで「集中力が高い」、
「力強い絵が描ける」というような「得意」
を生かしてもらおうというものです。

ひょうたんカフェではパッケージの絵を描いたり、
ハンドピックして出てきた欠点豆を
使用して織ったコースターを現在作っていること
でプロジェクトに携わっています。
(過去に行われたトリココーヒーの大ナゴヤの授業はこちら



「仕事を人に合わせる」

井上さんがとある雑誌に寄稿した
文章を読み上げて頂きました。

要約は以下の通りです。

>鳴海絞の職人さんが障がい者の方に
染め方を教えるために、
絞りがきちんと出ているもの>と絞りが緩く、
柄が半分ほどしか出ていないものの2つを用意して、
正しいものを選んで>もらおうとしました。

>複数人に聞き、選んだのは皆後者のものでした。
理由を聞くと「かわいいから」だそう。

>それを聞いて職人さんは新たな技法を
生み出すことが出来るかもしれない、
と考えたそう>です。
つまり、新たな相乗効果が生まれたのです。

>一般的に日本の企業で行われているのは
「人が仕事に合わせる」という考え方。
これは経>費削減、業績を追い求める考え方です。

>一方、福祉の現場で必要なのは
「仕事を人に合わせる」という考え方。



>福祉施設では生産管理から販売まで
すべてを一括で行うことは難しい。

>できないことをできるところと協働することで、
新たにその想いに共感する協力者が現れ、
>新たな価値を生み出すことが
出来るのではないでしょうか。

「仕事を人に合わせる」。
あまり考えたことのない働き方のように思えます。


最後に感想を3~4人のグループごとに共有しました。
その一部を紹介します。

・これからの仕事の在り方として
「仕事を人に合わせる」は喜びややりがいに
つながるのではないか。

・障害のある方が施設の中に
とどまるのではなく様々に繋がることで
仕事が楽しくなりそう、壁なく楽しめるのではないか

・「勉強、運動ができない」と
同様に考えればよいのでは?

・障害のある方と一緒の空間にいると壁は感じないと思う。



最後に先生から
クラウドファンディングの説明(下記参照)がされ、
集合写真を撮り、授業は終了しました。
終了後にも生徒のみなさん同士や先生と
交流が盛んに交わされていました。

授業を振り返って、
私自身も「福祉」に対しては暗いイメージ、
遠く壁を感じるイメージを持っていましたが、
井上さんの話を聞いてより身近に感じられました。

また、「仕事を人に合わせる」という考え方は
非常に斬新な考え方でした。
その人に合った形で生きる方法を模索することは
どんな人にも当てはまるのではないでしょうか。



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ひょうたんカフェでは
ファッションショーをメインに、
「IoTとFabと福祉」の報告会、ワークショップなどを
2020年1月に行う予定です。
この資金を集めるクラウドファンディングが
現在行われています。




くわしくはこちら。(11/13まで)
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レポート:進藤雄太朗
写真:石坂 喜和

※写真をクリックすると拡大します。


 

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先生

井上 愛 / NPO法人ひょうたんカフェ 副代表理事・多機能事業所(生活介護・就労継続支援B型)管理者兼サービス管理責任者/ ふくしのふりや

中村区で障害のある方の手織り活動に携わって20年。最近では、鳴海絞り、地域の伝統産業と障害のある方の手仕事を繋げる可能性を探っている。

今回の教室

MACHEN(マッヘン)

住所:名古屋市中村区名駅南1丁目16-25 第3森ビル3階

※名古屋駅より徒歩10分程
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