授業詳細

CLASS


本丸御殿「上洛殿」に見る、彫刻欄間の技と歴史

開催日時:2023年03月23日(木) 17時45分 ~ 20時00分

教室:名古屋城本丸御殿 孔雀之間

レポートUP

先生: 岩倉 綾泉 / 井波彫刻伝統工芸士

カテゴリ:【城子屋/歴史・文化】

定 員 :35人

※本講座は、名古屋城主催の「城子屋」プログラムです。
※参加費:500円(別途、名古屋城入城料が必要です)
※受付場所:名古屋城正門(本丸御殿まで徒歩10分程度)
※本丸御殿見学がございます。靴下の着用をお願いいたします。
※2023年3月22日(火)12時00分まで先着順でお申し込みを受け付けます。
名古屋城とつくる学びの場「学びでつながる城とまち。城子屋」。
本丸御殿・孔雀之間を会場に、名古屋の「城」と「まち」について学びを深めるプログラムです。
これまで約400年前の名古屋城築城時、そして平成の本丸御殿復元でも用いられた木曽・裏木曽の木材、木が育つ森を守ってきた山守について、金鯱の由来、かつて城内にあった庭園の存在など、さまざまな題材を取り上げてきました。

先生を務めるのは、名古屋城や尾張藩にまつわる、歴史、技芸、教育、文化などを研究する人や、伝統を受け継ぐ人たち。名古屋城の調査研究に携わる現役学芸員が、考古学の専門家の立場から名古屋城について解説する講座もあるなど、登壇する先生によってテーマも構成もさまざまです。

今回の城子屋のテーマは「彫刻欄間」です。
名古屋城で彫刻欄間といえば、本丸御殿「上洛殿」の彫刻欄間。本丸御殿を象徴する7枚の彫刻欄間の復元を手がけたのは、富山県南砺市井波に拠点を置く「井波彫刻協同組合」でした。
井波は、古くから木彫が盛んで「日本一の木彫刻のまち」といわれるほど。職人が全国各地の現場に出向いて、彫刻欄間製作をしてきました。「井波彫刻」は国の伝統工芸品に指定されています。

授業では、井波彫刻伝統工芸士・岩倉綾泉さんを先生に迎え、井波彫刻や欄間に関する基礎知識をはじめ、本丸御殿「上洛殿」の彫刻欄間復元のいきさつなどを紹介。
本丸御殿の見学タイムも設け、「上洛殿」の彫刻欄間の特徴や職人目線の「見どころ」などを解説します。
夜の帳が下りた、昼間とはまた違った雰囲気の中で彫刻欄間について学び、匠の技を味わってみましょう。

【スケジュール】
17:30 名古屋城正門にて受付開始
17:45 正門から孔雀之間に移動
18:00 授業開始
20:00 終了


主催:名古屋城(名古屋市)
運営:大ナゴヤ大学


【城子屋】
かつて「寺子屋」が、読み書き算盤を学ぶ地域に開かれた場であったように、名古屋城をまちに暮らす人たちの学びの場とするプログラムです。城やまちに関する知識を深められる、老若男女誰もが参加できる場をつくります。


【過去開催した講座】
・尾張名古屋で磨かれ続ける柳生新陰流の技 〜第二十二世宗家が語り、魅せる剣術文化の極意〜
https://dai-nagoya.univnet.jp/subjects/detail/609

・殿さまの御庭 ―名古屋城二之丸御庭と下御深井御庭―
https://dai-nagoya.univnet.jp/subjects/detail/632

・御深井丸に佇む古代の石造物 ―団原古墳石室と河内飛鳥寺塔心礎―
https://dai-nagoya.univnet.jp/subjects/detail/640
桜が開花し、春の雰囲気が一層色濃くなり始めた3月23日に、城子屋講座「本丸御殿『上洛殿』に見る、彫刻欄間の技と歴史」が開催されました。



今回の題材は、2018年に完成した名古屋城本丸御殿を彩る、豪華絢爛な彫刻欄間。古くから木彫が盛んな「日本一の木彫刻のまち」富山県南砺市井波に生まれ、本丸御殿内の彫刻欄間の復元にも携わった、井波彫刻伝統工芸士の岩倉稜泉さんが講師を務めました。



まずは岩倉さんによる講演からスタート。井波のまちの歴史や井波彫刻の特徴など、井波で彫刻が盛んな理由を、岩倉さんが現役の職人の目線で紹介します。

井波彫刻の始まりは江戸時代中期。井波の瑞泉寺本堂再建のため京都本願寺から派遣された御用彫刻師・前川三四郎に、・番匠屋九代七左衛門ら4人の地元大工が彫刻の技法を習ったことを契機に、多くの木彫職人が輩出されてきました。



井波で腕を磨いた彫刻職人は寺社の創建や修復に従事するため、全国各地を飛び回っていたのだとか。そんな歩みもあり、現代も歴史的建造物の修復に井波の職人が関わっているといいます。



講座では、名古屋城本丸御殿復元のあらましも紹介。京都・二条城の視察の様子や残っている資料の検証の流れなどの解説がありました。

名古屋城は図面や文献、湿板写真などの資料がとりわけ多く残っていることで知られ、復元にも大いに役立ったといいます。しかし、だからといって復元が容易だったかというと、そうではありません。真正面から撮影している写真は限られますし、加えてレンズの歪みなども考慮する必要があります。真正面に近しい角度から撮影した写真を調整加工しても、実物を真正面から見た場合とは必ず差異が生じます。



「モノによっては、OKが出るまでに1年以上を要しました」という岩倉さんの言葉からも、一度失ってしまったものの復元の難しさがうかがえます。

講座中、生徒の皆さんは真剣そのものといった様子で岩倉さんの話に耳を傾けていました。時折、岩倉さんが口にする、現場に携わった人だけが知る「ここだけの話」を耳にして、目を丸くしたり笑い声をこぼしたりする場面もありました。



後半は、岩倉さんの案内のもと、夜の本丸御殿を見学。工事中は、現在観覧客が通る廊下に足場を組んで欄間を持ち上げて設置したそうです。



見学中には、生徒さんから「この部分はどうしてこうなっているのですか?」「この欄間はどちらが正面?」といった質問が飛び交いました。

欄間のふちに装飾の一部が重なっていることを指摘された際には「もしかしたら、もともとは重なっていなかったかもしれませんね」と岩倉さん。今までは、美しさに目を奪われるばかりでしたが、岩倉さんの言葉に「過去に思いを馳せる」のも、復元されたものを鑑賞する醍醐味なのかもしれないと感じました。



匠の技はもちろん、当時の様子を自分なりに思い描きながら「もしかしたら当時はこうだったのかもしれない」と想像してみたら、新たな発見があるかもしれません。



レポート:伊藤成美
写真:大野嵩明

※写真をクリックすると拡大します。


 

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先生

岩倉 綾泉 / 井波彫刻伝統工芸士

昭和27年旧井波町生まれ。父・岩倉勘宰に師事。深、籠彫り、細密彫刻を得意とし神社仏閣、屋台彫刻、欄間、置物彫刻等を制作する。日展、元・現代工芸美術家協会員、元・井波彫刻協同組合理事長、元・井波彫刻伝統工芸士会会長

今回の教室

名古屋城本丸御殿 孔雀之間

住所:〒460-0031 愛知県名古屋市中区本丸1−1
※教室は和室です
地図を見る

徳川家康の命によって建てられた、尾張徳川家の城・名古屋城。その一角をしめる本丸御殿は、尾張藩主の住居かつ藩の政庁として1615年(慶長20)に完成。1945年(昭和20)、空襲により残念ながら焼失し、永らく復元が待ち望まれてきました。幸いなことに、江戸時代の図面や記録、昭和戦前期に作成された実測図、古写真などが残されていたため、2009年(平成21)から復元工事を開始。第一級の史料をもとに、他では類を見ない正確さで忠実に復元を進めてきました。2018年(平成30)には、江戸幕府将軍家光の宿泊のために建造された最も格式が高い「上洛殿」や「湯殿書院」が完成し、その優美な姿を公開しています。